中学受験では複数回受験を実施している中学校が多く存在しています。
当初私は日程が異なるぐらいの認識しかなかったのですが、調べていくと複数回受験には以下のような優遇措置がありました。
- 加点による優遇措置
- ボーダーラインでの優遇措置
- 繰り上げ合格時の優遇措置
- 点数の高いほうが採用される優遇措置(いいとこどり)
- 受験費用の優遇措置
本記事では複数回受験の優遇措置の他に、複数回受験のメリット・デメリット等について調べてまとめてみました。
優遇措置をフル活用して優位に中学受験を進めましょう!
中学受験の1回受験と複数回受験とは?
1回受験と複数回受験についてご説明いたします。
1回受験
1回受験は文字通り、入学試験が1回のみの受験を指します。
一発勝負のため親子共々緊張感は半端ないでしょう…(^^;
我が家の息子も小学校受験は一発勝負だったので緊張したのを覚えています…。
中学受験の緊張感とは異なるとは思いますが、一発勝負の緊張感は何とも言えないものがあります。
1回受験を行っている中学校
東京及び神奈川で1回受験を行っている中学校は以下の通りです。
なお、調べた限りでは埼玉及び千葉で1回受験を行っている中学校は確認できませんでした。
進学を希望している中学校がある場合は、各中学校の入試要項をご確認ください。
東京・男子
・開成 ・麻布 ・武蔵 ・駒場東邦 ・早稲田大学高等学院
東京・女子
・桜蔭 ・女子学院 ・雙葉
東京・共学
・早稲田実業 ・青山学院 ・東邦音楽大学附属東邦 等
神奈川・男子
・浅野 ・栄光学園 ・慶応義塾普通部
神奈川・女子
・フェリス女学院 ・横浜雙葉(帰国除く)
神奈川・共学
・慶応義塾湘南藤沢(1次試験+2次試験)
複数回受験
複数回受験はその名前の通り、入学試験が複数回設けられている受験となっております。
複数回あるのは、一般の入学試験が複数回設けられている場合もあれば、試験科目(特待生コース等のコース)の違いにより入学試験が複数回設けられている場合もあります。
複数回受験を行っている主な中学校
東京、神奈川、埼玉及び千葉で複数回受験を行っている中学校は以下の通りです。
進学を希望している中学校がある場合は、各中学校の入試要項をご確認ください。
東京・男子
・海城 ・巣鴨 ・学習院 ・サレジオ ・世田谷学園 ・早稲田 等
東京・女子
・学習院女子 ・鷗友鴎友学園女子 ・吉祥女子 ・香蘭女学校 ・共立女子 等
東京・共学
・渋谷教育学園渋谷 ・中央大学附属 ・広尾学園 ・明治大学付属中野八王子 ・法政大学 等
神奈川・男子
・鎌倉学園 ・サレジオ学院 ・逗子開成 ・聖光学院 等
神奈川・女子
・洗足学園 ・横浜共立学園 ・鎌倉女学院 ・湘南白百合学園 等
神奈川・共学
・青山学院横浜英和 ・山手学院 ・法政大学第二 ・中央大学附属横浜 ・神奈川大学附属 等
埼玉
・栄東 ・開智 ・立教新座 ・大宮開成 ・城北埼玉 等
千葉
・渋谷教育学園幕張 ・市川 ・東海大学付属浦安 ・東邦大学付属東邦 ・昭和学院秀英 等
複数回受験が行われる理由とは?
特待生コース等を設けている場合は試験日が複数になるのは理解できるのですが、そもそも複数回受験が行われる理由とは何でしょうか?
最大の理由は辞退者が出ることだと考えられます。
中学受験では5~6校を併願受験するのが一般的です。
そのため志望順位の高い中学校に後日合格した場合、志望順位の低い中学校は辞退することになります。
そのため特に辞退者が多く出るような中学校は複数回受験を実施せざるを得ないのではないでしょうか。
ちなみに参考ではありますが、下表に開成中学の入試実績を掲載しました。
開成中学自体は複数回受験を実施しているわけではありませんが、東大進学者数No.1の開成でさえ入学辞退者は80~110名程度います。(辞退者は筑波大駒場へ進学しているのでしょうか?)
私なんかの感覚からすれば、開成に合格したのにもったいないと感じてしまいます…(^^;
(子供にとってどこが最適な学校か?の視点を持たなければと毎回自戒しております。)
年度 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 |
募集定員 | 300 | 300 | 300 | 300 | 300 |
出願者 | 1234 | 1231 | 1266 | 1246 | 1206 |
出願倍率 | 4.1 | 4.1 | 4.2 | 4.2 | 4.0 |
受験者 | 1171 | 1159 | 1188 | 1051 | 1050 |
合格者 | 388 | 396 | 397 | 398 | 416 |
倍率 | 3.0 | 2.9 | 3.0 | 2.6 | 2.5 |
入学者 | 306 | 308 | 304 | 304 | 305 |
もちろんこのようなネガティブな理由だけではなく、受験生に多くのチャンスを与えたいとの理由で複数回受験を実施していることも考えられます。
複数回受験の優遇措置及びメリットについて
それでは受験生にとっての複数回受験のメリットについて紹介したいと思います。
優遇措置を取り入れている中学校の一例を示しましたが、各中学校によって優遇措置の内容は異なりますので、各中学校の入試要項をご確認ください。
加点による優遇措置
複数回受験した受験生全員に対し、加点による優遇措置を設けている中学校があります。
志望校が加点による優遇措置を実施している場合は、複数回受験による加点でライバルたちに差を付けることも可能です。
加点による優遇措置のある中学校の例・・・東京都市大付属、栄東、成城学園、独協埼玉 等
ボーダーラインでの優遇措置
複数回受験した受験生が、2回目以降に受験した際に合格ラインギリギリにいた場合、複数回受験していない受験生よりも優遇される措置を設けている中学校があります。
ボーダーラインでの優遇措置のある中学校の例・・・暁星、世田谷学園、大宮開成、日出学園 等
繰り上げ合格時の優遇措置
募集定員に満たない場合、点数の高い順に繰り上げ合格となる場合があります。
繰り上げ合格者の選定時にもボーダーライン上に複数名の受験者がいる場合があり、複数回受験をしていた受験者を優遇して繰り上げ合格とすることがあります。
繰り上げ合格時の優遇措置のある中学校の例・・・学習院、吉祥女子、法政大学、立教池袋 等
点数の高いほうが採用される優遇措置(いいとこどり)
例えば1回目の試験で80点、2回目の70点を取った科目があった場合、1回目の点数が採用される優遇措置を設けている中学校もあります。
試験日によって体調などもコンディションも微妙に異なり、思うように実力を発揮できないこともあるかと思います。
本優遇措置はそんな時の救済になり得ます。
点数の高いほうが採用される優遇措置のある中学校の例・・・鎌倉学園、横浜女学院、カリタス 等
受験費用の優遇措置
受験料は25,000円前後が相場となっておりますが、毎回25,000円と言うわけではなく、2回目以降は1回目の受験料にプラスで5,000円などのような優遇措置を設けている中学校があるようです。
また近年では、受験料を1回収めてしまえば全ての試験を受けることも可能な中学校もあります。
例えば東京都市大学付属中学校では、試験回数が6回(グローバル枠、帰国枠も含む)ありますが、何回受けても25,000円となります。
もしも全試験を受けた場合は、実質25000÷6=約4167円/回となり、かなりお安くなります。
受験料も受験し放題の定額制導入?といったところでしょうか。
昨今の少子化を生き残るため、受験自体の経済的ハードルを下げた中学校の戦略とも思えます。
各試験の問題が類似している場合がある
複数回の試験日を設けている中学校では、各回の試験問題が類似していることがあります。
そのため1回目で実力を発揮できなかったとしても、2回目以降の試験できちんと対策をして取り組めば得点アップのチャンスがあります。
全ての中学校で類似問題が出題されるわけではありませんが、1回目の試験問題で出題傾向を把握しておいて損はないでしょう。
再挑戦可能なため精神的な余裕が生まれる
複数回受験可能であれば例え1回目で実力を発揮できなくても再挑戦可能なため、精神的な面で余裕が生まれるのではないでしょうか。
精神的に余裕が生まれ、落ち着いた状態で試験に臨むことができればこれまでの努力の成果をいかんなく発揮できると思います。
会場の雰囲気に慣れることが可能である
大人の場合でも初めていく場所は緊張するものです。
私はその典型的なパターンの人間ですが…(^^;
複数回同じ会場で試験をすることにより、会場の雰囲気に慣れることはもちろん、会場に行くまでの道のりにも慣れ、やはり精神的に落ち着いた状態を作り出すことが可能だと思います。
複数回受験のデメリットについて
続いて複数回受験のデメリットについて見ていきたいと思います。
試験日が遅い回の入試は倍率が上昇する
開成や麻布のような1回受験である上位校の試験を受けた後、複数回受験を実施している中学校の試験に開成や麻布を受験するようなハイレベルな受験生が集中し、試験の出願及び合格倍率が上昇することがあります。
新御三家として人気実力ともに兼ね備えた海城中学の事例を見てみたいと思います。
例年海城中学では、1回目の試験は開成や麻布と同じ2/1、2回目の試験を2/3に実施しています。
一般①(2/1)
年度 | 2020 | 2021 | 2022 |
募集定員 | 145 | 145 | 145 |
出願者 | 539 | 552 | 545 |
出願倍率 | 3.7 | 3.8 | 3.8 |
受験者 | 472 | 481 | 489 |
合格者 | 167 | 165 | 163 |
合格倍率 | 2.8 | 2.9 | 3.0 |
一般②(2/3)
年度 | 2020 | 2021 | 2022 |
募集定員 | 145 | 145 | 145 |
出願者 | 1276 | 1277 | 1315 |
出願倍率 | 8.8 | 8.8 | 9.1 |
受験者 | 921 | 957 | 1006 |
合格者 | 290 | 294 | 305 |
合格倍率 | 3.2 | 3.3 | 3.3 |
表をご覧いただければ分かる通り、一般②(2/3)の出願倍率も合格倍率も一般①(2/1)と比較すると上昇していることが分かります。
出願倍率に至っては約9倍…(^^;
しかも一般②を受験しに来るのは2/1に開成や麻布を受験したような猛者たちです。
「海城にどうしても合格したい!」という明確な意志があるのであれば、一般①で受ける以外にはないと思います。
試験の日程調整が難しくなる
複数回受験をするということは、当然のことながら試験回数が増えて他の中学校との試験の日程の調整が難しくなります。
複数回受験の優遇措置をどの中学校でも受けたいところではありますが、試験日は2月の頭に密集しているため、どうしても試験日が重なるような事態も発生すると思います。
お子様とよく話し合い優先順位付けをしておきたいところです。
肉体的・精神的負担が大きくなる
試験日が2月頭に密集しているがゆえに、午前と午後で違う中学校を受験するという事態も想定できます。
緊張感に包まれる試験に連続で挑戦するだけでも過酷な上に、試験会場間を移動もしなければなりません。
私が以前読んだ「勇者たちの中学受験」では、保護者の方は公共交通機関だけではなく、車でお子様を送迎して負担を軽減したりしていました。
駐車場を用意してくれている中学校もあるようなので、入試前に必ず確認しておきたいです。
中学受験における親の心情の機微を見事に描いた「勇者たちの中学受験」のレビューをしてみましたので、ご興味のある方は是非お読みください!
試験回ごとの対策は必要か?
複数回受験を実施している中学校の入試において、試験回ごとの試験対策は必要なのでしょうか?
これに関しては中学校ごとに複数回受験であっても、各回の試験で類似の問題を出題する中学もあれば、試験回ごとに出題傾向が異なる中学校もあるとしか言えないです。
複数回受験を実施している中学校を受験する際には、必ず過去問の各回に目を通し、傾向をつかむことが重要だと考えます。
場合によっては志望校に強い塾や家庭教師等に助言を求める必要もあるかと思います。
複数回受験での注意点について
複数回受験を実施している中学校を受験する場合、受験回数が増えることでお子様の精神的・肉体的負担も増加します。
過密スケジュールになりすぎないような配慮がまず第一に必要だと考えます。
そのためにも繰り返しになりますが、親子間でしっかりとどこの中学を優先するか優先順位付けをし、どの回を受験し、どの回を受験しないかの取捨選択が必要だと思います。
ただし、デメリットのところでも述べたように、後の試験回の方が倍率が上昇する傾向もあるため、志望校の受験者層と例年の倍率を考慮したスケジュールの組み立て方も重要です。
また、1回目の受験に落ちてしまった場合は、2回目のチャンスがあると分かっていたとしてもお子様が精神的に落ち込むことが予想されます。
そのためにも、実力的に確実に合格可能な安全校を受験し、試験慣れして自信を付けておくことも重要だと考えます。
自信が付けば2回目以降の試験に対して精神的に余裕を持って臨むことが可能になると思います。
本記事では、複数回受験の優遇措置及びメリット・デメリット等について紹介してきました。
複数回受験の優遇措置としては以下のようなものがありました。
- 加点による優遇措置
- ボーダーラインでの優遇措置
- 繰り上げ合格時の優遇措置
- 点数の高いほうが採用される優遇措置(いいとこどり)
- 受験費用の優遇措置
ただし、私立中学の受験は2月頭に集中しているため、複数回受験をしようと思っても試験日が重なってしまったり、過密スケジュールになることも考えられます。
緊張する試験を連続で受けることで、お子様の精神的・肉体的負担が大幅に増加してしまい、本来の実力が発揮でなくなってしまっては本末転倒です。
そのためにもご家庭でよく話し合い、志望校の優先順位付けをし、どの中学校のどの回の試験を受けるのか綿密なスケジュールを立てることが重要だと考えられます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
併せてこちらの記事も是非お読みください!