Yahoo!ニュースを見ていたら体罰?なのかどうか明確に分からないニュース記事が掲載されておりました。
ニュースによると給食の減量は肉体的苦痛を与える体罰だとして児童の家族が訴訟を提起したようです。
給食を勝手に減量するのはひどいなと思いつつ、何故そのような罰を与えたのかというと、この児童が給食当番をしなかったり等素行不良だったようです…。
詳細が不明なので現時点で何とも言えませんが、給食を減らす罰は良くなかったとは思いますが、この児童に何も問題が無かったかと言われると何とも言えません。
本記事では体罰の定義、体罰の判断基準、体罰禁止の理由、体罰の発生件数等についてまとめてみました。
以前体罰について取り上げた記事については、是非こちらの記事をご参照下さい。
給食減量による体罰のニュースについて
本ニュースの舞台は福岡県宮若市にある小学校です。
現在3年生の男子児童が通う宮若市の小学校において、この男子児童が給食当番をしない、宿題をしていないこと等を理由に常態的に給食を減らされていたようです。
成長期に給食を担任の判断で勝手に減らすのはいかがなものかと思います。
ただし、この男子児童にも反省すべき点があるようですし、何か他の形で罰を与えることはできなかったのでしょうか。
また担任の教師が知能指数検査を受けるよう勧めたこともこの両親の逆鱗に触れたようで、「人格尊厳を損ねる指導」だと主張しているようです。
これは伝え方に何かしらの問題があったように思えてなりません。
将来のためにも療育が必要な児童も確かにおりますし、知能指数検査を受けるよう促すこと自体は悪いことではないと思います。
伝え方さえ間違えなければの話ですが…(^^;
ニュース記事では「職員会議の決定だ」「2年生から特別支援学校に通ってもらうことになるため、早く受診しないと転校手続きが間に合わない」とあったことから、この伝え方はよろしくないんじゃないかなと思います。
厄介払いしたくてしょうがないという意識がひしひしと伝わってきます(^^;
知能指数検査を受ける目的とその活用方法についてきちんと説明すべきだったと思います。
ちなみに男子児童が実際に検査を受けると平均的な範囲だったようです。
現在男子児童とその両親は給食の減量が肉体的及び精神的苦痛を与える体罰にあたるとして、宮若市や県に対して165万円の損害賠償を求めているとのことです。
宮若市や県は請求の棄却を福岡地裁に求めています。
男子児童にも非があるように思えますし、給食当番をしないことや宿題をしないことに関してはこの両親はどう考えているのでしょうか?
男子児童の行いを改めるような働きかけはあったのでしょうか?
一方的に市や県を相手取っていきなり訴訟になったのでしょうか…。
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— RKB毎日放送NEWS📺 (@rkbnews4ch) October 17, 2023
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🗣給食の減量は肉体的苦痛を与える“体罰”?自治体に165万円求めた訴訟で自治体側は争う姿勢、「知能テスト」を求めた女性教諭は担任から外れる
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知能指数検査とは?
担任の教師が知能指数検査を受けるよう促したとのことですが、そもそも知能指数検査とは何なのでしょうか?
知能指数検査というと真っ先に「IQ(intelligence quotient)」という言葉が思い浮かぶかと思います。
IQの数値だけを見て高い、低いと一喜一憂しているイメージがありますが、実際は違うようです。
以下、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所のホームページから引用します。
知能検査の目的と適用
知能検査の目的は、障害の有無を判定したり診断することにあるのではなく、子どもの発達の状態や困難な状況に関する客観的な情報を得て、最も適切な指導の方向性を考えることにその意味があります。
子どもの実態に合わせた適切な知能検査を実施することで、同世代集団内での相対的な子どもの位置(個人間差)や、一人の子どもの能力の発達の様相やバランス具合(個人内差)を知ることができます。
子どもの知能発達の実態を把握することで、子どものつまずきの原因を把握したり、つまずきが起こらないような具体的な指導の方向性、あるいは工夫を得たりすることが可能となります。また、子どもによっては検査結果を共有することで、自分の学習上・生活上のつまずきを予想したり改善したりすることができ、情緒的な安定や行動上の困難も改善される可能性もあります。あるいはまた、保護者や学級担任等の関係者にとっても、子どもの状態像を客観的に把握できることで、情緒的に安定したかかわりや新しい角度からの工夫をもったかかわりなどが可能となる場合もあります。
引用:独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, “知能検査の目的と適用”, http://forum.nise.go.jp/soudan-db/htdocs/index.php?key=muy7v5g0c-477#:~:text=%E7%9F%A5%E8%83%BD%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%AE%E7%9B%AE%E7%9A%84%E3%81%AF,%E3%81%AB%E3%81%9D%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
知能指数の高い低いで勝負しているわけではなく、指導の方向性を見極めるためのツールに過ぎないということです。
知能指数が高いと頭脳明晰で偏差値も高い、なんてイメージがありますが、本来はそんな評価のために用いるわけではありません。
他の児童ができるのに特定の児童だけができないことがあった場合に、客観的に数値として把握し、できないことをできるようになるための方策を考える。
そんな手助けをしてくれるのが知能指数検査といったところでしょうか。
単純に要領が悪い等で片づけるのではなく、知能指数という数値から判断し、児童1人1人にあったサポートができたほうがよほど建設的ですよね。
そういった意味でも、今回の男子児童は教員の指示を理解できない兆候があり、知能指数という面から他の児童と比較してハードルを抱えていないかどうか確かめようとしたに過ぎないと思います。
それを「人格尊厳を損ねる」と言ってしまうのは短絡的だと感じました。
知能指数検査の本質を理解していない発言だと思います。
体罰の定義について
どういった行為が体罰に該当するのか気になるところだと思います。
体罰については、文部科学省から学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例として以下のような事例が紹介されています。
○身体に対する侵害を内容とするもの
・体育の授業中、危険な行為をした児童の背中を足で踏みつける。
・帰りの会で足をぶらぶらさせて座り、前の席の児童に足を当てた児童を、突き飛ばして転倒させる。
・授業態度について指導したが反抗的な言動をした複数の生徒らの頬を平手打ちする。
・立ち歩きの多い生徒を叱ったが聞かず、席につかないため、頬をつねって席につかせる。
・生徒指導に応じず、下校しようとしている生徒の腕を引いたところ、生徒が腕を振り払ったため、当該生徒の頭を平手で叩(たた)く。
・給食の時間、ふざけていた生徒に対し、口頭で注意したが聞かなかったため、持っていたボールペンを投げつけ、生徒に当てる。
・部活動顧問の指示に従わず、ユニフォームの片づけが不十分であったため、当該生徒の頬を殴打する。
○被罰者に肉体的苦痛を与えるようなもの
・放課後に児童を教室に残留させ、児童がトイレに行きたいと訴えたが、一切、室外に出ることを許さない。
・別室指導のため、給食の時間を含めて生徒を長く別室に留め置き、一切室外に出ることを許さない。
・宿題を忘れた児童に対して、教室の後方で正座で授業を受けるよう言い、児童が苦痛を訴えたが、そのままの姿勢を保持させた。
引用:文部科学省. “学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例”,
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm
体罰とは直接的に身体に罰を与えるだけではなく、トイレに行かせない、別室から出ることを許さないようなものも体罰に該当することを知りました。
よく考えるとこれらは強要罪に該当するのでは?とも思いましたが、法律の専門家の方々から見たらどうなのでしょうか。
学校教育法では体罰は明確に禁止されておりますが、生徒に対する懲戒は認めています。
懲戒の事例としては以下のようなものが挙げられております。
認められる懲戒(通常、懲戒権の範囲内と判断されると考えられる行為)(ただし肉体的苦痛を伴わないものに限る。)
※学校教育法施行規則に定める退学・停学・訓告以外で認められると考えられるものの例
・放課後等に教室に残留させる。
・授業中、教室内に起立させる。
・学習課題や清掃活動を課す。
・学校当番を多く割り当てる。
・立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる。
・練習に遅刻した生徒を試合に出さずに見学させる。
引用:文部科学省. “学校教育法第11条に規定する児童生徒の懲戒・体罰等に関する参考事例”,
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331908.htm
懲戒は認めていますが、やはりここでも但し書きで肉体的苦痛は伴わないものに限るとの記載があります。
懲戒権の範囲内と判断される行為を見ていくと、給食を減量することはやはりやりすぎなのかもしれません。
個人的な感想ですが、懲戒権の範囲内と言っても正直あんまり懲戒になっていないよなと思ってしまいます(^^;
こんなのが懲戒って認識なら厳しい指導は難しいでしょうね。
体罰の判断基準について
学校教育法上は体罰と懲戒の2種類の規定がありました。
それではこの体罰と懲戒の境界線はどこにあるのでしょうか。
先ほど紹介した通知文の中に以下のような記載がありました。
2 懲戒と体罰の区別について
(1)教員等が児童生徒に対して行った懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、当該児童生徒の年齢、健康、心身の発達状況、当該行為が行われた場所的及び時間的環境、懲戒の態様等の諸条件を総合的に考え、個々の事案ごとに判断する必要がある。この際、単に、懲戒行為をした教員等や、懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観のみにより判断するのではなく、諸条件を客観的に考慮して判断すべきである。(2)(1)により、その懲戒の内容が身体的性質のもの、すなわち、身体に対する侵害を内容とするもの(殴る、蹴る等)、児童生徒に肉体的苦痛を与えるようなもの(正座・直立等特定の姿勢を長時間にわたって保持させる等)に当たると判断された場合は、体罰に該当する。
引用:文部科学省, “体罰の禁止及び児童生徒理解に基づく指導の徹底について(通知)”, 平成25年3月13日, https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1331907.htm
殴る、蹴るはもちろん体罰ですが、懲戒のつもりでも長時間の正座等の身体的性質のものは体罰になるようです。
これは先ほど申し上げた事例中でも記載がありました。
ポイントとしては、懲戒行為をした教員や懲戒行為を受けた児童生徒・保護者の主観のみで判断せず、個々の事案ごとの判断が必要だと言うことです。
男子児童の普段の行いに鑑みて、給食の減量という懲戒行為が果たして正当で肉体的苦痛を伴わない懲戒行為だと言えるのかどうか…。
一般的に言って自分の子供が協調性の欠けた行為を学校でしていたら、まずは保護者として子供をきちんと躾けるべきだと思います。
ニュースでは詳細が不明ですが、今回の男子児童の保護者はきちんと叱ったのでしょうか…。
今後の裁判の行方に注目です。
体罰の発生件数
文部科学省が「体罰の実態把握について(令和2年度)」という調査を実施していたので、抜粋して表を作成してみました。
発生件数 | 公立 | 国立 | 私立 |
小学校 | 121 | ― | 2 |
中学校 | 130 | 1 | 16 |
高等学校 | 123 | ― | 71 |
ちなみに児童・生徒数は以下の表のとおりです。
児童・生徒数 | 公立 | 国立 | 私立 |
小学校 | 6,185,145 | 36,622 | 78,926 |
中学校 | 2,941,423 | 27,701 | 242,095 |
高等学校 | 2,121,407 | 8,452 | 1,169,153 |
公立での体罰発生件数が突出しているように見えますが、児童・生徒数が多いためです。
発生件数 | 公立 | 国立 | 私立 |
小学校 | 0.0020 | ― | 0.0025 |
中学校 | 0.0044 | 0.0036 | 0.0066 |
高等学校 | 0.0058 | ― | 0.0061 |
発生件数を児童・生徒数で割って、発生割合を表したのが上表になります。
発生割合で考えると微妙に私立の方が多いことが分かります。
公立は数が多いので発生件数も多く、ニュース沙汰になる機会もその分多くなるため公立は荒れているというイメージがありますが、実際は私立も同じぐらいの割合ですね。
公立は地域によって荒れている場所もありますし、逆に地方は公立の方が偏差値的には上で、私立が受け皿になっているような場合もあるので、一概に公立だから荒れていて体罰も多いというような単純なものではなさそうです。
公立、国立、私立問わず、結局のところ教員の資質に左右されるのでしょうか。
逆にこれだけ体罰にうるさい社会になったのに、体罰事態が発生してしまっていることの方が問題かもしれません。
体罰をせざるを得ないような状況になってしまったのでしょうか…。
そんな状況でも体罰はダメですが…。
とは言いつつ体罰を肯定する気はありませんが、本当に手のつけようのない児童・生徒はいますけどね…(^^;(実体験)
本記事では体罰の定義、体罰の判断基準、体罰禁止の理由、体罰の発生件数等についてまとめてみました。
体罰か懲戒権の範囲内かが裁判の争点になりそうです。
懲戒権の行使の事例として文部科学省が例示しているものを鑑みると、給食の減量という行為は懲戒権の範囲を逸脱していると判断されてしまうかもしれませんね。
と言うか懲戒権の行使の事例がしょぼすぎる…(^^;
懲戒にならないような気がします(^^;
最後までお読みいただきありがとうございました。
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